大豆など、植物性の食材を使って本物の肉の味や食感を再現した代替肉。最近、世界的に注目されていて、日本でもスーパーなどで見かけるようになりました。
これまでも代替肉は存在していましたが、あまりポピュラーではありませんでした。なぜなら、代替肉はベジタリアン(菜食主義者)やビーガン(動物に由来する製品全てを食べない人)など、一定層にしかニーズのない存在だったからです。
それがなぜ、今になって注目されるようになったのでしょうか。
代替肉が注目される理由
世界的なSDGsへの取り組み
代替肉が注目されるようになった大きな理由に、SDGsの観点からみた課題があります。そのひとつが、世界中で育てられた家畜から出る、メタンガスによる地球温暖化です。家畜業界が出している二酸化炭素の排出量は、地球全体の15%をも占めるとされており問題視されています。また、畜産業を営む際には広大な土地が必要です。それらの土地を開拓するために世界各地で森林伐採が起こっており、それが地球温暖化を助長していると言われているのです。
さらに水質汚染や水資源の確保など、家畜を多く育てるほど地球に悪影響を及ぼすことが分かってきました。代替肉は、これらの問題を少しでも解決しようという考えから生まれた動きです。
世界的な食糧危機
日本では人口減少が問題になっていますが、世界規模で見ると地球の人口は年々増加傾向にあります。それに伴って、食糧の需要も年々高まっています。世界で多くの人が貧困による飢えに苦しんでいる一方で、栽培された大豆やトウモロコシの多くが畜産動物に与えられているのが実情です。
このような矛盾を解消し、人々が飢えに苦しむことなく暮らすためにも、むやみに多くの家畜を育てる現状を変えていこうという動きから、代替肉がつくられるようになりました。
代替肉の市場規模
植物由来の代替肉の市場規模は、世界市場で2021年には5億8,940万ドルでした。代替肉の需要は増え続けており、2022年から2030年までの間、平均成長率は7.7%成長となっています。2030年には、およそ8倍の114億3,010万ドルに達すると予測されています。
代替肉の市場が活発なのはアメリカで、アメリカのインポッシブル・フーズ社やビヨンド・ミート社の知名度が高いです。細胞を培養して肉を作る部門ではイート・ジャストが有名で、中国やイスラエルなどにも市場展開をはじめています。
代替肉の開発に取り組む動きは、国内の食品メーカーでもはじまっています。食肉企業のプリマハムや日本ハム、大豆製品大手のマルコメなど、多くの企業が大豆肉の開発に着手しています。代替肉の開発を行うベンチャーも続々と登場しており、食品業界はブームに乗り遅れまいと開発に注力している現状です。
今後もさまざまな企業やメーカーが代替肉の開発や販売に力を入れるとみられており、国内でもますます市場が広がると予想されています。
代替肉の種類
大豆ミート
主に大豆を原料としている乾燥タイプの大豆ミートは、もっともポピュラーな代替肉です。ひき肉のような見た目のミンチタイプ、お肉の塊を再現したフィレタイプなどさまざまな形があり、料理にも使いやすいことから、スーパーでも手に入るようになりました。
培養肉
牛や豚、鶏などの動物から取り出した細胞を、動物の体外で培養して作る肉です。家畜を育てるための広大な土地が要らないため森林伐採を防げますし、家畜を殺さなくても良いので動物たちを守ることにもつながります。再生医療の技術で作る、動物や地球にやさしい食材として注目されています。
代替肉のメリット
肉が食べられない人、アレルギーの人も食べられる
宗教的な戒律や特定の志向があり食肉を食べられない人や、食物アレルギーを抱えている人も、植物を原料とした代替肉なら食べられるようになる可能性があります。
普段の食生活においても選べるメニューが増えて、食生活が豊かになるでしょう。周りの人々とほぼ同じメニューを食べられるようになるため気を遣わずに済みますし、疎外感を感じることもなくなるかもしれません。
健康維持やダイエットに役立つ
植物性食材から作られる代替肉は、生活習慣病の原因となるコレステロールが含まれていません。肥満の原因になる脂質もごくわずかなため、健康管理のために購入する人も増えてきています。
また、代替肉は豚肉に比べてカロリーも約半分と、低カロリーな点でダイエット分野でも注目されています。豚肉ロースの場合、100gあたりのカロリーは242kcalですが、大豆などの植物を原料する代替肉なら約100 kcalに抑えられるのです。
ジョギングなど、運動やトレーニングでカロリーを消費するのは簡単ではありません。運動習慣のない方や運動が苦手な方がカロリーコントロールをしたいとき、代替肉を取り入れるだけで簡単に制御ができます。
食糧の安定供給につながる
大豆やえんどう豆といった代替肉の主な原料は、さまざまな地域で栽培できる植物です。また、今まで規格外品として廃棄していた豆や家畜の飼料として与えていた豆を代替肉の原料として活用すれば、食糧を安定的に供給できるようになると期待されています。
新たな顧客層の開拓
さまざまな顧客層にリーチする機会が増えたことで、企業にとってもビジネス機会が増大します。これまでは動物の肉が好きだったけれど、年齢とともに食べられなくなってきた人や動物の肉よりも味が好きだという人など、新たなターゲットにアプローチできるようになり、ファンの増大につなげることで売上の向上を見込めるようになります。
代替肉のデメリット
食肉に比べて割高
広大な土地で多くの家畜を育てて安く出荷できる従来の食肉に対し、植物由来の代替肉は加工費がかかるため、いまだに割高です。開発や専用の施設が必要な培養肉となるとさらにコストがかかるため、流通量も少なく高めです。
代替肉の製造や加工コストをいかに減らせるかが世界での流通量を高めるカギにもなります。メーカー各社は製造コストを下げる研究にも着手しており、これから代替肉の価格がどう変化していくかは注目です。
栄養不足になる場合がある
動物性の肉を食べずに代替肉ばかりを摂取していると、ビタミンや鉄分、カルシウムなどの栄養が不足してしまう可能性があります。特に、ビタミンB12はほとんどの植物に含まれていません。
海外の代替肉の中には、ビタミンB12を添加している製品もありますが、栄養のために人工的に添加されたものを口にすることになるため、敬遠する人もいるでしょう。
製造プロセスによってはかえってCO2が増加する
カーボンニュートラルに効果がある、SDGs食材として注目されている代替肉ですが、製造過程によってはCO2の増加につながってしまいます。
例えば、中国で育てた原材料の豆をアメリカで加工し、日本に輸入したとすると、材料や製品の輸送ごとにCO2が排出されてしまいます。CO2を削減して地球温暖化を防ぐのであれば、原材料の栽培から製品の製造まで、一連のプロセスを自国で賄うことが求められます。
食肉だけじゃない!代替食品ブームのきざし
カニに似せたカニかまぼこやバターに似せたマーガリン、ビールのような発泡酒など、別の原料を用いて味や見た目を似せる代替食品。
加工技術の進歩とともにさまざまな代替食品が生まれては広く受け入れられ、多くが身近な存在となっています。
食糧危機やSDGs以外でも、食糧不足や原材料の高騰、食の多様性など、さまざまな課題から代替食品が誕生しています。
最近では、鳥インフルエンザの影響による卵不足の影響から、卵の代替食品が登場したことも話題となりました。
ここでは、代替肉以外の代替食品についてまとめました。
卵を使わない代替卵
植物由来の原料だけで、卵の見た目や味、食感を再現した商品が、国内の食品メーカーが続々と発売しています。マヨネーズで有名なキューピーは、豆乳をベースとしたスクランブルエッグ風の商品を開発。ケチャップなどの製造加工で知られるカゴメも、野菜をベースにした代替卵の発売を開始しています。
卵アレルギーを持つ人が安心して食べられるとして、日本でも幼稚園や小学校などの学校給食での導入が検討されているとのこと。一定層のニーズがあり、これからも需要が高まりそうです。
魚を使わない代替魚
人口増加や経済成長に伴う魚の乱獲によって、海の食糧不足も世界的な問題となっています。そこで登場したのが、魚を使わずに見た目や味を表現した代替魚です。
代替魚の主な原料は、大豆や小麦、トウモロコシなど。マグロの代替魚は、代替ツナとも呼ばれます。
日本では古くからカニカマなどの代替食品の開発が活発で、最近ではこんにゃくを原料にさしみに似せたマグロも開発されています。これら新しい代替魚は市場にも流通してはじめており、今後の行方が注目されます。
牛乳を使わない代替ミルク
ミルクの代用品として古くから知られていて、地位を確立しているのが豆乳です。最近では、アーモンドを原料としたアーモンドミルクやオーツ麦を使ったオーツミルク、ココナツを原料としたココナツミルクも広く知られるようになり、牛乳と並んでスーパーでも見かけるようになりました。それぞれ風味は異なりますが、牛乳アレルギーを持つ人も好みに合わせて飲むことができます。
最近では、スーパーやコンビニでも目にする機会の増えた代替肉。調理も簡単で、すぐに日々の食事に取り入れられます。
しかし、代替肉はヘルシー、アレルギーでも食べられるといったメリットがある一方で、解決しなくてはならない課題やデメリットもあります。
特に栄養不足になる可能性がある点は、個々が気を付けなければならない問題です。健康のために取り入れたのに、かえって体調を崩してしまっては元も子もありません。
サプリメントで栄養を補う、可能であれば食肉も食べるなど、栄養バランスを意識しながら食生活を送るようにしましょう。